マニラで小さな店や会社がホームページを作ろうとすると、道はたいてい2つしかない。テンプレートを買って自分で埋めるか、制作会社に一から頼むか。前者は安いけれど、週末が設定で消える。後者はきちんとしているけれど、何を頼めばいいかを言葉にするところから始まる。その間の道を作りたくて、11月2日に Inspo Studio というページを公開した。
中身はホームページのデザイン20種類。リゾート、電動自転車、ファッション、コーヒーの焙煎所、ヨットのチャーター、e スポーツの決勝戦まで、15の業種に分けた。どれも、開くと最初の画面で12秒の映像が流れる。気に入ったものを選んでもらえれば、その形を土台に、お客さまのロゴと写真と言葉で作り直し、公開まで私たちが行う。
20のブランドは、すべて架空だ。実在の会社に似ないように名前を決め、画面にも架空のブランドのコンセプトデザインだと書いた。Studio でお客さまのサイトを作ったことは、まだ一度もない。見せられるのは見本だけで、見本を実績のように見せることはしない、と最初に決めた。
フィリピン版にするとき、作品の舞台を1つずつ置き換えた。ヨットの航路はエルニドからコロンへ、コーヒーの焙煎所はバギオに、豆はサガダやアポ山のものに、ウェルネスの滞在施設はシアルガオに、e スポーツの決勝戦はマニラに。金額は全部ペソにした。見本でも、知らない国の地名と通貨が並ぶと、自分の店の話に見えなくなる。
映像は動画のファイルではない。Inspo Motion の作例と同じく、ブラウザの中でコードが描いている。ファイルを流さないので、モバイルのデータが軽く、どの大きさの画面でも文字がにじまない。12秒にしたのは、最初の画面で用件が伝わり、それ以上は待たせない長さだからだ。
写真は、無料で使える写真のサービスから123枚選んだ。いちばん時間を使ったのは、写っていてはいけないものを探すことだった。香水の瓶のラベル、ゲーム機材のロゴ、車の正面の形。香水の瓶とカードは、写真を使わずにコードで描いた。描けば、誰のロゴも写り込まない。
失敗もした。公開の前に、スマホの幅(390ピクセル)でページを1枚ずつ撮って確かめたら、一覧のページがスマホなのに横幅1300ピクセルに広がっていた。パソコン用に1280ピクセルで作ったデザインを縮めて見せる部品が、縮める前の幅のまま、外側の枠を押し広げていた。パソコンで見ている間は、まったく気づかなかった。
もう1つは、このサイトならではの失敗だった。このサイトのページは明るい背景から始まるので、上のメニューは、背景が透けたまま濃い色の文字で出る作りになっている。ところが Studio のページは暗い背景から始まる。開いてみると、メニューの文字が背景に溶けて見えなかった。Studio のページだけ、メニューの帯を最初から白くした。
ヨットの作品では、スマホで見ると島の名前の「EL NIDO」が左の端で切れていた。航路の線と島の名前は別々に置いていて、縦長の画面で線のほうだけが拡大されて、位置がずれていた。線の置き方をそろえて直した。どれも、パソコンの画面だけ見ていたら残っていた失敗だ。直したあと、スマホの幅で全部のページを撮り直して、横にはみ出すページが0になったのを確かめた。
音は最初は鳴らさない。開いた瞬間に音が出るページは、たいてい嫌われる。ボタンで音を出したときだけ、フリー音源の曲名と作曲者の名前を画面に出す。その曲を使う約束として、名前を出すことが決まっているからだ。
値段は載せていない。ページの数、言語の数、問い合わせや注文の仕組みがあるかどうかで、手間が大きく変わるからだ。話を聞いてから見積もる。見積もりは無料で、聞くだけでもかまわない。契約の相手は Inspo Nexus Global OPC。言葉は英語、フィリピン語(Taglish)、日本語で、それぞれの行の長さに合わせて組み直す。
今日ひとつだけやれることがあるとすれば、自分のホームページの最初の画面で、何をいちばんに見せたいかを1つ決めること。料理の一皿なのか、店の場所なのか、予約のボタンなのか。それが決まっていれば、Studio に頼むとしても、自分で作るとしても、最初の12秒の中身はもう決まっている。