「返品が壊れています」という連絡を、3週間で14件もらった。2つの店からで、どちらもテストに付き合ってくれている店だ。ソフトは一度も落ちていない。記録のほうにも、異常として残っているものは何もなかった。
KAZENA Order はレジだ。返品はその中の機能で、4つの画面を順に進む。元のレシートを探す、戻す行を選ぶ、理由を選ぶ、最後に確認して確定する。確定を押すと、画面はレシートの一覧に戻る。戻るだけで、何も出ない。
店の返品には期限がある。元の会計から7日まで、という設定が店ごとに入っている。確定の処理は、その7日を確かめて、外れていたら何もせずに終わっていた。その「何もせずに終わる」1行を書いたのは私だ。画面に出す文言を後で決めるつもりで、空けたまま忘れた。
事務所で再現しなかった理由は、あとから分かって情けなかった。試すためのレシートは、試すその朝につくる。だから手元にあるのは、いつも期限の中にあるものだけだ。7日を超えたレシートを用意するには、7日待つか、日付を触るかのどちらかで、私はどちらもしていなかった。
重いのは、店で起きていたことのほうだ。確定は4つ目の画面にある。店員は客を前にして、レシートを探し、行を選び、理由を選んでいる。記録から数えると、そこまでで平均 2分40秒かかっていた。そのあとで、画面が黙って戻る。
期限の外にある返品は、3週間で31件あった。そのうち 9件は、レジを通さずに処理されていた。手書きの紙を付けて、あとで事務所に回す。店員が悪いのではない。目の前の客を待たせないために、使えない道具を回避したのは、正しい判断だ。黙って止まるソフトは、人を自分の外へ押し出す。
最初の直しは、条件を外れているときに確定のボタンを灰色にする、というものだった。半日で入れた。4日で、連絡が 6件増えた。文面は「ボタンが押せない」に変わっていた。壊れているという報告より、受け取って始末が悪い。
灰色のボタンは、何も言わない。押せない理由も、どうすればいいのかも、客に何と言えばいいのかも出てこない。止まるという結果だけは同じで、手がかりだけが減っている。押せないボタンは、押せない理由を自分で言わないかぎり、壊れたボタンと区別がつかない。
次に、確かめる場所を入口に移した。レシートの一覧で、7日を超えているものを初めから外した。画面としては、これはきれいになった。1週間後、店から、客が持っているレシートがシステムに無いことになっている、と言われた。
隠すことは、説明することではない。客の手元にある紙が画面に出てこないのは、期限を過ぎていると言われるより悪い。店員は、無いものについては何も説明できない。
落ち着いた形はこうだ。期限を超えたレシートも一覧に出す。ただし選べない状態で出して、その隣に、会計の日付と、期限を何日超えているかを書く。確定のボタンは押せる状態のままにして、進められないときは、その理由をボタンの隣に置く。文言は、店員がそのまま客に声で言える言い方にした。「このレシートは8月3日のもので、返品の期限を 5日過ぎています」。
そのあとの3週間で、壊れているという連絡は 0件になった。期限の外の返品は 12件あって、12件とも入口で止まっている。紙を付けて事務所に回ってきたものは 1件で、それは期限とは別の理由だった。
半日で終わると見積もって、8日かかった。文言と並びを決めるのに 2日、残りは過去の 31件と、紙で回っていた 9件を帳簿の上で揃える時間だ。KAZENA 側のエンジニアに送ったら、同じ形のものを2か所知っていると返ってきた。どちらも、入口では何も言わず、出口で黙って止まる作りだった。事務所ではいま、条件を1つ足すときに、それを人がどこで知るのか、知ったときに何と言えるのかを先に聞いている。